応募にあたっては、事前に、税理士法人がどんなところかを理解しておくことをお勧めします。税理士法人の勤務経験のない方が疑問に思うであろうことについて、Q&A形式でお答えします。
Q 税理士法人の仕事内容を教えてください。
A 税理士法人の一番重要な仕事は税務申告書の作成です。税務申告書というのは税金を計算した書類のことで、税務署に提出します。個人事業主は3月15日が確定申告書の提出期限で、法人は決算から2ヶ月が申告書の提出期限になります。申告書は事業者が自分で作成提出することができますが、国家資格を持つ税理士に作成を依頼することができます。
税額は利益(正確には所得)に税率を乗じて算出します。利益は売上から仕入と経費を差し引いて計算します。この売上、仕入、経費、利益は決算書の形で表現されます。決算書を作成するには複式簿記の知識が必要となるので、税理士法人が会社に代わって決算書を作成します。
Q 記帳代行とは何ですか?
A 記帳代行というのは、お客様の会計帳簿を作成することです。事業者本人に代わって、請求書や領収書などの原始証憑から現金出納簿や売掛帳、買掛帳、固定資産台帳などの帳簿類を作成したり、複式簿記で取引を記録、もしくはパソコンに入力して貸借対照表や損益計算書などの決算書類を作成します。会計帳簿の作成には、簿記を始め専門的な知識が必要となります。
社長さんが自分で会計帳簿を作成するのは手間も時間もかかりますし、自分で簿記会計を勉強していたのでは、本来の営業活動がままなりません。そこで、会社に代わって記帳を代行するのが記帳代行です。
Q 税金計算のほかにはどういう仕事をしているのですか?
A 税金計算の結果を「税務申告書」という形で、税務署に提出します。税務申告書は提出期限や添付書類が決まっており、税務申告書の作成が税理士法人の一番の仕事となります。税務申告書には、所得税、法人税、所得税、贈与税、相続税、固定資産税、事業税、市民税など様々な申告書があります。
税務申告書は決算書をもとに作成され、決算書は日々の会計仕訳を集計して作成されます。そのため、正確な税金計算のためには、そもそもの仕訳の内容を確認する必要があります。一つ一つの仕訳について間違いがないかどうか、税務上経費にできる要件を充足するかどうか、消費税の課税区分に間違いがないかどうかなど、毎月、お客様を訪問して会社の入力内容を確認します。毎月訪問することで、会計、税務上の様々な質問や相談、依頼を受けることになります。
「機械を購入するので銀行から借入をするのだけれど、事業計画の作成を手伝ってくれないか」
「資金繰りが厳しいから銀行にリスケをお願したいのだけれど、資金繰表の作成を手伝ってもらえないか」
「もう年だから、株を息子に譲りたい。少しづつ贈与したいのだけれど毎年の株価算定をしてもらえるだろうか」
「毎月の給与計算と年末調整までお願いできるかしら」
「今まで個人事業だったけれど、会社形態で事業をしたい」
「今年から年金があって、別に土地も売却したのだけれど、確定申告もお願いできるかな」
など、会計や税務、経営上の意思決定に係る、ありとあらゆる質問や依頼が飛び込んできます。その中には単発業務のものもあれば、継続的業務になるものもあります。十数件の担当先をもって、毎月の巡回訪問で宿題事項や依頼事項を預かって対応し、決算月は決算と税務申告の準備をするというイメージとなります。
Q どの程度の知識が必要とされるのですか?
また、税理士の資格がなくても活躍できるのでしょうか?
A 簿記は業界の共通言語です。会社で経理事務をしている人はだいたい簿記の3級程度は持っていますし、そういう人達を指導するわけですから、簿記の知識がないとお話になりません。最近の会計ソフトの中には、伝票様式で入力しなくても自動的に仕訳処理ができるものもありますが、我々はお客様の行った会計処理を検証する立場ですから、簿記の仕組みの理解は不可欠です。はまなす会計では入社後の早い段階で2級を取得してもらっています。
税法についての知識も不可欠ですが、こちらはじっくりと勉強していく必要があります。また、税理士試験の合格はハードルが高いので、民間会社が毎年実施している税法の中級試験や上級試験を受験してもらっています。税務知識はOJTだけではなく、自分自身が机に座ってテキストを開いて学ぶ必要があるので、勉強嫌いの人にはそもそも向かない仕事です。
資格がなくても活躍できるのかという質問に対しては「Yes」です。簿記と税法の(商品)知識があれば、あとはその人の人間力次第で、お客様からの信頼を勝ち取ることが出来ます。税務申告書を作成するという点では製造業ですが、顧客対応の点ではサービス業です。気の利く人、誠実な人、コミュニケーション力の高い人は頼りにされます。
Q 他業種からの転職でも活躍できますか?
A もちろん活躍できます。この仕事の特徴として、始めに会計と税務の専門的な知識を身につけるのには時間がかかりますが、年間のスケジュールや段取りは決まってますので、どの顧問先もほぼ同じような流れとなることがあげられます。また、質問や相談もだいたい似ていますから、ある程度の知識とパターンが身につくとコミュニケーション力の高低が対お客様との関係で重要になってきます。他業種での経験は必ずプラスになります
Q 税理士事務所と税理士法人とではどう違うのですか?
A 税理士は個人に帰属する資格なので、株式会社の形態で税理士業務をすることはできません。税理士法人は2人以上の税理士が集まって設立した法人で、税理士業務をすることができる特別の会社です。個人事務所が「〇〇税理士事務所」と名乗るのと同様に、税理士法人は「××税理士法人」と名乗らなければなりません。つまり、税理士事務所は個人形態の事務所、税理士法人は法人形態の事務所ですが、業務の中身は共に税理士業務です。
Q 会計ソフトはたくさん種類がありますが、全部の使い方を憶えなければならないのですか?
A 会計ソフトというのは、仕訳を入力をすると、科目ごとに集計して決算書まで作成するソフトウェアのことです。弥生会計、勘定奉行、会計王、freee、マネーフォワードなどがそれにあたります。エッサムやミロク、魔法陣などは税務申告書の作成ソフトなので会計ソフトとは異なります。会計ソフトで決算書までを作成し、その決算書の数字を基に税務申告書を作成するのが税務申告書作成のソフトウェアです。会計ソフトは会社も使いますが、税務申告書の作成ソフトは税理士法人が使います。
クラウド会計というのはデータの保存方法の話です。弥生会計でも勘定奉行でも、かつてはフロッピーディスクやフラッシュメモリなどの外部媒体、その後は会社内のサーバにデータを保管していましたが、現在ではクラウドで保管する会社も増えてきました。クラウドにすると会社はデータ保管に伴うリスクがなくなり、セキュリティ対策にかけるコストも大幅に削減できます。
たいていの場合、税理士法人はどれか1つの会計ソフトを利用していて、お客様にもそれを勧めます。そのため、ありとあらゆる会計ソフトの使い方を憶える必要はありません。
Q 職員さんは皆、税理士資格取得を目標としているのですか?
A かつてこの業界では、資格を目指す人達が手弁当で働いていました。給料は安くてもよいので、実務を勉強するために税理士法人で働いて、資格を取ったら客先を分けてもらって独立開業という時代でした。しかしながら、今では状況はだいぶ変わっています。資格を取得して将来独立開業を目指す人もいますが、資格取得を目標としないで長く働く人もいます。